「言葉にならない声に耳をすます」

 

宇宙が存在するということは、いったいどういうことなのか。ぼくが生まれて、生きて、死んでいくということはどういうことなのか。ぼくは何も知らない。何もわからない。そういう知らないこと、わからないことに、まっすぐ向き合うことを、まず「信仰」というのだと、ぼくは思っている。宗教は、そこに答えを与えて、疑問を解決してくれるのかもしれないが、純粋な信仰とは少し違うのではないか。なぜならば、なにものかから答えを与えられることを、ぼくは望んではいないからだ。疑問を抱いたまま、世界の神秘と、ぼくはただ向き合いたいのだ。ぼくにとって工藝は、存在の神秘を解き明かす魂の営みである。それを人生の中心に据える生涯を送ることを教えてくれたのは、また「禅」である。

赤木明登